国際情勢の変化で不透明になる日台経済関係
今週リトアニアで開催されている北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議では当然、お隣、ウクライナでの戦争が主な課題である。ウクライナが領土の奪回で軍事支援が必要である中、NATO各国はどのようにさらなる支援を打ち出すか、そしてウクライナがNATO加盟までの道のりについて議論を重ねている。だが、NATO各国がウクライナ情勢に没頭する中、岸田総理は去年に続き、二年連続でNATOの首脳会議に参加している。日本からもウクライナに引続き支援することを表明すると同時に、NATOがアジアに目を向けることを言及している。
もちろん、岸田総理が懸念しているのは中国の軍事的、そして経済的な台頭である。ロシアには軍事支援を行っていないものの、中国はインドとともにロシアから石油、天然ガスなどの資源を買い占め、実情、ロシアがウクライナ侵攻を継続する経済的な後ろ盾になっている。特に日本として懸念するのが、中露双方が貿易上より親密な関係を保つことが、軍事的な関係にもなりうるところだ。NATO首脳会議においても公式に中国の軍事的な動きに懸念をはっきりと示している。その中国の軍事的台頭において、やはり台湾情勢が一番気になる。中国が長年と台湾との統一を政治目標としているが、中露の軍事関係がより親密になることによって、台湾近辺での戦争がより現実的になっている。先月末には、ロシアの軍艦二艦が台湾の東海岸近くで発見され、この異例な軍事活動は中露の協力関係が一層強くなっている証だとも言える。仮に中露が同盟国として台湾に軍事活動を仕掛けるのであれば、東アジア全体において、かなりの経済的ダメージを与えかねない。特に、近年親密になっている日台経済関係には即ブレーキがかかる。
2016年、日本を代表する電子機器メーカーの一つでも言えるシャープは台湾の鴻海精密工業に買収され、一年弱で黒字化を達成した。日本を代表するブランドが海外企業に買収されることが珍しいことである中、鴻海がうまくシャープに新たな企業文化をいち早く導入し、債務超過の経営危機から引き揚げたことは日本の製造業界で話題となった。シャープの買収は台湾企業による日本企業の買収に抵抗を下げ、その後、アドバンテック、ハイウィン、友嘉実業などの台湾系メーカーが日本で買収を行うきっかけとなっている。
このような買収には、経済的なグローバル化が重要な裏づけとなっている。世界銀行の統計データを見ると、各国の企業や政府による対外直接投資(FDI)は1970年の123.58億米ドルから2007年に過去最高額の3.134兆米ドルまで増加し、2020年には新型コロナヴィルスの影響で大幅に減少しているものの、8950億米ドルに達している。このようなFDIの増加には、欧米や日本などの経済先進国に本社を構える多国籍企業(MNCs)が世界中に新たな営業や製造拠点を立ち上げ、海外市場をより重点的に制覇する努力が見られる。
特に、日系企業は海外事業の拡大により、海外にとび立ち、現地の人々と積極的に仕事をこなせる人材の需要が高まっている。日本貿易振興機構(JETRO)の統計データによると、日本のFDIも1983年の36.12億米ドルから2020年の1522.99億米ドルにまで増加している。2019年には過去最高額の2580.67億米ドルを記録し、地域的な内訳としても1983年の欧米中心からアジアを中心とする他の地域への投資が欧米に匹敵する現状に変化している。
しかし、中国が引き続き世界貿易において重要な役割を果たす中、脱・中国の経済戦略は限界的なものに過ぎない。そう考えると、いくら軍事的、経済的な準備を行っても、中国がロシアの協力のもと、台湾に戦争を仕掛けることで、日台経済関係は、経済グローバル化とともに、危機に陥るだろう。FDIにおける投資、買収は少子化、円安などで苦しめられている日本経済の活気を取り戻すことに大々的に貢献するが、複雑になる国際情勢の中、どれぐらいの継続性があるかはより不透明になっている。
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