新しい伝統ができ、経済は活性化される

 伝統、それは文化の物理的な形として代々受け継がれられた。人々は伝統を守ることによって、そのコミュニティーの一員であることを実感し、社会的なアイデンティティと地位を確保した。そして、コミュニティーのさらなる発展、継続のため、より多くのメンバーを集めることにインセンティブを感じ、日々努力をしている。やがて伝統は定期的に人を集める行事として形を変え、文化に貢献するだけではなく、貿易や観光資源として地元の経済に大きく価値を提供することになっている。

日本では、その伝統と経済の親密性において、非常にいい例がある。毎年の大晦日、日本の人々は近くのお寺や神社に足を運び、来年も良い一年になるように初詣のお参りをする。日本各地の初詣の名所は、全国から参拝者が訪れ、大忙しになる。もちろん、人が集まる場所は商売になる。初詣で賑わう神社やお寺の周りには出店がたくさん出店し、ごく普通の屋台料理で普段の数十倍、数百倍の売上を叩き出している。更に、一日で参拝できない場所の周りでは、宿泊や交通を始めとする他のサービス業も時期に合わせて特に盛んになる。

初詣で特に儲かっているのは鉄道業者かもしれない。川崎大師や成田新勝寺は、東京から直通路線により、毎年300万人以上が初詣で訪れるようになった。そして、寺院や神社の人混みを避けたい人たちは初詣の代わりに特設列車で新年初日の日の出を見ることもできるようになった。鉄道が新年初日で賑わうのは、もはや初詣自体の魅力だけではなく、その日、特別な鉄道サービスが存在することが要因として考えられる。伝統としての初詣の人気と鉄道の人気はお互い支え合う存在とも言える。

他国の鉄道会社も新年により頻繁に列車を走らせることで売り上げが増えることに気付き始めている。2020年12月、台湾鉄道管理局はフューチャーエクスプレス号と名付ける、新年パッケージツアー専用の列車を開設した。何十年もバンコク、シンガポール間で運行を続けているイースタン&オリエンタルエクスプレス号も新年サービスを提供し始めている。インド鉄道は年末の特設列車を運営し、新年のお祝いから人々が帰宅できるよう心がけている。シンガポールジャカルタなどの地下鉄、通勤電車も新年パーティー参加者の需要を満たせている。


奇妙なことに、今や伝統とも思われる初詣は、実は100年弱の歴史しかないと聞くとびっくりする人もいるだろう。その初詣の誕生はもはや最初から経済と深い関わりを見せた。江戸時代でも元旦にお参りをする風習はあったが、「初詣」が初めてマスコミで使われたのは
1885年である。その年、東京日日新聞は新たに神奈川県の川崎大師に鉄道の駅が設立され、東京から1日で参拝できることを報道した。それから、各鉄道会社が東京近辺の寺院や神社に新路線を開設し、初詣は各社が競い合う存在になった。

しかし、新年の祝いが伝統になるとつれ、鉄道を乗ること自体も日本を始めとするアジア各国で伝統となり、一般市民の新年に欠かせない存在になっている。中国で旧正月連休では、鉄道が毎年億単位の人々が旅に出る「春運」の主な輸送手段の一つとなっている。コロナ前は、タイベトナムでも、乗客であふれる新年の列車は当たり前でした。ツアーとパーティーから帰省や大切な人との再会まで、新年の列車は何百万人の新年のお祝いの一部となっている。これは正しく鉄道が伝統になっている証拠である。


初詣と同様、アジアにとって、鉄道はそれほど古いものではない。その歴史は1853年、英領インド・ムンバイの中心街とその郊外を結ぶ路線からスタートしている。しかし、鉄道が伝統になると、さらなる投資による鉄道網の拡大により、アジアでは鉄道が一層人気になるだろう。より自分に近い駅、より頻繁で速い列車、そして何よりも鉄道の旅という憧れとライフスタイルは、より多くの人々の身近な存在となり、鉄道を日常生活の一部とする。鉄道はアジア各地で社会の成り立ちの重要な一部となり、大人数を輸送できる交通機関として活躍している。

初詣と鉄道の短い歴史から見ると、伝統と成り立ちは再定義が必要かもしれない。とある行事が伝統として呼ばれるのは、長い道のりが必ずしも必要な訳では無い。だが、社会的地位が関係なく、一庶民でも気楽に参加できる包容性、個人店から大企業まで投資をすれば、高い確率で良いリターンを得られる経済的な優位性、そして既存の文化や社会的習慣との一致性は新たな伝統の成立において不可欠かもしてない。これからの経済、社会トレンドを観察する上で、このような新たな伝統のポテンチャルは興味深いものである。

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