旅の始まり、振り返るのを忘れずに

みなさんは「旅」という言葉を聞く時、どのようなものがまず頭に浮きますか?見たことのない美しい街並み、食べたことがない料理の味、そして想像もしていなかった運命の出会い。それが私にとってまず思いつくことです。旅からは、日常生活では得られない未知と触れ合える刺激を期待し、出発から遥か前よりその期待でワクワクを感じています。実際に旅でその期待が満たされるかどうかはわからないものの、ただ単に何か違うものを経験できる可能性があるだけでも毎日のルーティンに久しぶりの新鮮さが現れることを感じます。

しかし、気づいてるでしょうか?新たな出発の未知や新鮮さに対する期待で頭がいっぱいになってると同時に、みなさんは何かを忘れているようです。希望を膨らませて向き合う「前」の裏に存在するのは、もう十分わかった、経験しちゃったと思われる「過去」と「現在」です。今後の刺激を考えるうちに、これまでの歩みは脳の後ろに捨てられ、密かに眠ります。なぜならば、人生の新たな1ページ、可能性が溢れているこれからの道と比べると、これまで歩いてきた道は、知り尽くされたので、平凡で退屈と考えるまでもありません。

ですが、実際はどうでしょうか?みなさんにも過去の引っ越し、旅行や転職を思い出していただきたい。それらの新しい始まりができたのは、その前に仕事、学校、旅行や読書などから得られた人間関係、知識、そしてお金ではないでしょうか?人生のどの出発でも、新たにゼロからのスタートではなく、過去があるからこそできるものかもしれません。新天地で新生活をするのは昔の自分とのお別れと思い込みがちですけど、その動力の源、そしてその新たなスタートを実行できる能力、それは過去が基盤となっているのではないでしょうか?

「ここで線を引いて、次を始める。」新しい自分をこれから築きたい人々をそう言ってモチベーションを高めようとするが、その「線」は引けるものでしょうか?「これまで」と「これから」を完全に別々のものとして定義し、さらに「これから」を善、「これまで」を悪として評価することによって前に進むことは現実的ではないし、自分の一部を失わせることにもつながります。たとえ「これまで」がどれだけ平凡で退屈でも、それを生きてきたこそ、「これから」をきっかけが生まれたのです。

そう、自分の将来がワクワクを提供するのであれば、その裏付けには過去を生きてきた自信があるのだと言えるのです。知らない場所で知らないことをやるのは決して必ず成功することは保証できません。新しい生活に適用できず挫ける可能性は十分あります。それでも人々は新たな出発を選び、未知に触れることで自分の成長を期待する。その前向きな考え方があるのは、過去にも未知と出会い、それを受け入れられたポジティブな経験があるからこそです。昔できたから、これからもできる。だから我々は新たな出発を恐れないのです。

では、どうしたら新たな出発を面して、自分が捨てようとする過去を最大限に活かせるのでしょうか?私が思うには、人生の多様な経験において、何かしらの共通点を探すことだと思います。一見全く違う仕事内容、生活環境やコミュニティと関わっていても、一歩踏み込むと、全て自分の価値観、ライフスタイル及び理想像と合致している部分がたくさんあると思います。それは自分の精神的なアイデンティティを維持する重要な心理的な支えです。いろんな新たな取り組みを目指して出発しながらも、そのアイデンティティは失えません。

日本語では、自己認識のプロセスとして「棚卸し」という言葉が時々使われます。それは、自分がやってきたいこと、やりたいこととできることを総合的に考えることで、将来の方向性を決める便利なツールです。しかし、棚卸しの内容は社会人としての能力とやりがいに集中しすぎる傾向があるかと私は感じます。たとえ転職という仕事だけでの新たな出発でも、仕事内容だけでワクワクが生まれるのはありません。何十年生きてきた自分は誰、何を信じる、何で感情が上下する?これらは仕事と直接関係ないが、同様に重要な影響があります。

能力ではなく、感情の自分。やりがいではなく、楽しく生きる自分。それは、とある旅、とある仕事で形成されたものではなく、時間とともにゆっくりとまとまり、新たなインプットで徐々に変化し続けるものです。この流れには始まりと終わりがなく、これまでとこれからの境目もありません。新たな出発はその流れを中断するものではなく、足していくものです。新天地への旅をすることは過去とお別れするのはもったいないし、現実的に不可能です。なので、前に進むとしても、心の底で、今の自分を連れていきませんか?

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